電子カルテの標準化
「電子カルテを初めとする病院情報システムについて、データの互換性などを確保する取り組みを早急に進めるべきである。」
2018年9月26日に開催された社会保障審議会・医療部会ではこういった意見や指摘が多くの委員から出されました。
7月27日の前回会合においても同様の指摘が出ており、これらの指摘を受けて厚労省の伯野研究政策復興課長は「簡単ではないが、まず有識者から意見をいただき、我が国の実態、海外の状況を含めて、情報を収集し、課題の整理を行うことから始めたい」と考えを示しています。
一方で、医療情報の標準化といえば、以前より「IHE」や「HL7」「SS-MIX」などの取り組みや規約があり、それらがそれぞれどういう役割を担っているのかを解説します。
IHEとは
IHEとは Integrating the Healthcare Enterprise の略で医療情報システムの相互接続性を推進する国際的なプロジェクトです。
もともとIHEの概念は放射線領域の医療情報システムから発祥しました。
CTやMRI等の異なるメーカーの装置、システム間で画像情報を受送信することを望むようになります。
そこで生まれたのが「標準規格」と呼ばれる医療機器やシステムを問わずに情報の送受信を可能とするデータ規格です。
医用画像分野では「DICOM」(ダイコム)と呼ばれる医用画像情報の標準規格がそれにあたります。
電子カルテなどの医用文字情報の標準規格は「HL7」(エイチエルセブン)がそれにあたります。
一方、これら標準規格の使い方が明確でないと異なるメーカー間での機器やシステム接続する際に長時間の打ち合わせや開発期間、改修費用が発生してしまいます。
標準規格を円滑に利用することが可能であれば、打ち合わせやカスタマイズ省略が可能となり、導入費用の抑制や将来的な汎用性に期待を持つことができます。
IHEでは、これらの標準規格の使い方の「ガイドライン」を提案しています。
SS-MIXとは
SS-MIXとは、さまざまなインフラから配信される情報を蓄積するとともに標準的な診療情報提供書が編集できる「標準化ストレージ」という概念に着目し、すべての医療機関を対象とした医療情報の交換・共有による医療の質の向上を目的とした「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」(SS-MIX:Standardized Structured Medical Information eXchange)のことを指します。
SS-MIXは、記録された医療情報の電子化・標準化に向けた啓発活動の一環として、具体化したパッケージウェアの普及を行うものであり、
・パッケージウェアの開発
・ドキュメントの整備
・各ベンダによる同一の規格を実装したシステムの開発と普及
を行う事業です。
現在、「患者基本情報」「処方情報」「検査結果情報」「診療所見」「診療情報提供書」「画像情報」が交換・共有対象となっています。
交換規約の標準化
ここで再度「HL7」や「DICOM」が出てきます。
SS-MIXの標準化活動において、まず、交換規約の標準化が必要になります。
例えば、交換するデータ項目(例:氏名、生年月日、検査項目、検査結果)、データ項目ごとの記載ルール(例:氏名は「性」「名」「ミドルネーム」)、交換メッセージの形式(例:依頼情報に含む項目)を決める必要があります。
それらの決め事として、医用文字情報の標準規格は「HL7」、医用画像分野は「DICOM」を利用していることになります。
用語・コードの標準化
交換規約を標準化しただけでは地域医療連携を行うには不十分です。
各医療機関でマスタコードや用語が統一されておらず、基本的には病院独自コードで管理されています。
例えば用語であれば「GAMMA-GTP」や「γ -GTP」が混在していたりします。
それらの用語やコードを標準化する必要があり、厚生労働省が保険医療情報分野の標準規格を定めています。
<厚生労働省標準規格>
医薬品HOT コードマスター
ICD10 対応標準病名マスター
標準歯科病名マスター
臨床検査マスター
看護実践用語標準マスター
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