医療の質の評価・公表の背景と指標算出
新人診療情報管理士
「医療の質の評価って何のためにやるのかな。」
「医療の質の評価・公表等推進事業ってなに?」
「参加施設はどうやって選ばれるのかな。」
「医療の質の評価をする指標ってどんなのがあるのかな。」
「どうやったら簡単に指標をだせるのかな。」
このような悩みにお答えします。
もくじ
- 医療の質の評価・公表等推進事業の背景
- 団体ごとの取り組み~医療の質の評価・公表等推進事業~
- 評価指標を簡単に算出するには
医療の質の評価・公表等推進事業の背景
国(厚生労働省)が平成22年度からすすめている事業として「医療の質の評価・公表等推進事業」というものがあります。
医療技術が高度かつ複雑化してきているなかで、医療の質を測定したり評価する考えが広がり、国民の医療の質への関心が高まってきて、医療の質の向上や質に関する情報の公表が求められてきています。
一方で、情報の公表は慎重な意見もあり、厚生労働省としては「どのような臨床指標を用いて、どのようなやり方で公表するかを総合的に検討する必要がある。」と判断しました。
厚生労働省は医療の質の評価・公表に取り組む団体へ財政支援を行い、事業に取り組む団体は具体的な指標の選定や厚生労働省に対して結果報告・問題提起を行っています。
この事業へ参加する団体は「概ね40施設以上の病院により構成される団体」や「事業終了後も取組を継続」などの要件があります。
平成22年度~平成30年度では下記の団体が事業に取り組んでいます。
取組病院団体と実施施設数
- 一般社団法人 日本病院会【355】
- 全国自治体病院協議会【176】
- 社会福祉法人 恩賜財団済生会【157】
- 独立行政法人 国立病院機構【141】
- 全日本民主医療機関連合会【97】
- 日本赤十字社【74】
- 公益社団法人 全日本病院協会【41】
- 一般社団法人 日本慢性期医療協会【39】
- 独立行政法人 労働者健康安全機構【34】
これまでの事業の結果及び報告を踏まえて今後どうやって取り組みを継続していくか議論されている状況です。
団体ごと(主要3団体)の取り組み~医療の質の評価・公表等推進事業~
それぞれの団体がどのような取り組みを行いどのような結果だったのかまとめました。
日本病院会【355施設】 QIプロジェクトホームページトップ
取組概要
当会は本事業が開始となった平成22年度に参加したことを契機に、翌年度より現在まで「QIプロジェクト」として独自に活動を行っている。
当プロジェクトは「自院の診療の質を知り、経時的に改善する」ことを目的とし、医療の質の測定、評価、公表するための指標の検討をおこなっている。
主な活動として、フィードバックの他、本プロジェクトの参加施設を対象に意見交換会を年1回開催している。
指標の選択
現在、一般病床の指標は「DPCデータ」34項目と「DPC外データ」25項目。精神・療養病床は11項目で測定している。
システム整備状況とフィードバック
QIプロジェクトにおける参加施設専用のホームページを用意しており、各施設は自施設の専用ページよりDPCデータのアップロードならびに数値入力をする。
フィードバックは3ヵ月に1回の頻度で参加施設へ行っている。
データの種別は、月別、経年変化、病床別区分を作成し、ホームページからダウンロードできる。
指標の公表
各年度の最終報告書を当会のホームページにて掲載している。
公益社団法人 全国自治体病院協議会【176施設】 医療の質の評価・公表等推進事業のページ
取組概要
平成26年度から事業を開始している。
小規模病院(44床)から1000床を超える大規模病院の臨床指標データの収集・分析を行い公表している。
当協議会の会員のうち半数以上がDPC対象・準備病院ではないため、EFファイルからのデータを条件とせず、どの病院でも参加できるものとし、自治体病院特有のものや精神などの指標も取り入れている。
全国自治体病院学会シンポジウムで優秀病院の事例発表を行い横展開し、自治体病院の質の向上に向けた活動を行っている。
指標の選択
毎年、委員会での協議事項で指標の選定を行っている。平成30年度には一般37項目、精神27項目となっている。
システム整備状況とフィードバック
臨床指標評価検討委員会委員(会員病院職員)によってシステム構築を行っている。
各病院のEFファイルからCIを自動計算するソフトを開発して配布している。
自動計算ソフトの使用説明会を毎年4月に実施して、各病院の負担の軽減と数値の統一性を保っている。
3ヵ月ごとに提出された病院からのデータに対して、表紙の指標名右側に前年度比を表示し、病床規模別・二次医療圏別・精神科標榜別に比較ができるデータを返している。
指標の公表
公表する内容は委員会で議論し、当協議会ホームページで公表を行っている。
社会福祉法人 恩賜財団 済生会【157施設】 医療の質の評価・公表等推進事業のページ
取組概要
平成23年度から事業を開始している。
医療・福祉の医療の質の確保・向上等に関する専門小委員会にて、参加病院数、指標の選択及び公表方法を検討している。
指標の選択
平成29年度以降は指標の選択や公表方法の検討は済生会保健・医療・福祉総合研究所で行っている。
システム整備状況とフィードバック
済生会本部にDPCデータ・レセプトデータを蓄積するデータベースを構築。
データの収集、分析評価を済生会保健・医療・福祉総合研究所で行っている。
研修会にて個別医療機関へのフィードバックを実施。
評価指標を簡単に算出するには
それぞれの団体で共通の指標と独自の指標があります。
それと、DPCデータのみで算出できる指標とDPCデータのみでは算出できない指標が混在しています。
やっかいなものはDPCデータのみでは算出できない指標です。
電子カルテや手術システムあるいは看護支援システムからデータを取ってくる必要がある指標もありデータ収集と加工(整備)が伴ってきます。
さらには電子カルテメーカーによって必要なデータを電子カルテが保有しているケースとしていないケースがあります。
そしてさらにはデータを保有していても持ち方が異なるため、なかなか使いまわしができないのがネックです。
提出するごとに四苦八苦するのを避ける方法としてはデータウェアハウスメーカーに指標作成も含めて依頼することです。
このような課題を解決することも含めてデータウェアハウスの共通モデルであるSDMというものが生まれています。
ちなみにSDMを使ったデータウェアハウスを開発しているのがJUSTDWHです。ご参考にどうぞ。